こんな悩みを解決
- 適切な患者との関わり方を知りたい!
- 患者との信頼関係構築が治療効果に影響するの?
- コミュニケーションスキルはどのように向上できるの?
患者さんとの関わり方って難しいですよね。
患者との適切な関わり方は、誠実に向き合うことが何よりも重要です。
患者さんとの信頼関係を気づくことで、治療効果を高めることができます。
患者との関わり方に悩む理学療法士の方には、ラポール形成について理解を深めることをおすすめします。
この記事では、患者さんとの信頼関係の重要性、適切な関わり方のコツを説明します。
じっくり読んで臨床に生かしてみてください。
タップできる目次
理学療法士の患者との関わり方は重要です
コミュニケーションを学び、適切な関係を結ぶことで、以下のようなメリットがあります。
ココがおすすめ
- 適切なリハビリができる
- 自主トレーニングを行なってくれる
- キャンセル率が低くなる
ひとつずつ説明していきます。
適切なリハビリができる
理学療法士なら、急性期・慢性期などに応じて治療を変えていくことは当たり前ですよね。しかし、患者さんによっては違うことを要求されます。
- 炎症期でも痛い場所を揉んでほしいと言われる
- 炎症が落ち着いていても、怖くて動かせないと言われる
こんな経験があると思います。患者さんとのコミュニケーションが正しく図れていると、こちらから要求することを信じて治療を受け入れてくれます。
キャンセル率が少なくなる
整形外科クリニックでの運動器リハビリテーションであれば、基本的な期限は150日間になります。つまり、多い人で、約5ヶ月、週1〜2回の頻度で会うことになります。患者さんとの関係が築けていないと、途中で来なくなってしまうのは容易に想像できると思います。
リハビリは地道に組織の状態を変化させ、動作を再建していきます。治療成績が停滞するときも通い続けるためには、理学療法士との信頼関係が重要です。
自主トレーニングを行なってくれる
外来のリハビリでは自主トレーニングを行う人と、そうではない人は治療成績は全く違いますよね。リハビリ中に理学療法士がどんなに頑張っても1週間で40分程度しか介入が行えません。組織に変化を出すためには、それ以外の時間の方が重要になります。
継続が苦手な人でも、「この人が言うなら自主トレ頑張るしかない」と思わせるためには、コツコツと関係を積み重ねることが重要です。
理学療法士の患者との関わり方:ラポール形成を学ぶ
ラポール形成とは、相手との間に信頼関係や共感を築くことを指します。フランス語の「rapport(ラポール)」には「繋がり」や「架け橋」という意味があり、心理学やコミュニケーションの分野でよく使われる用語です。相手を思い通りにコントロールする小手先のテクニックではありません。誠実な人間関係を築くためのステップとして捉えましょう。
肯定と尊重
相手の価値観や感情を受け入れ、共感することで、安心感と信頼関係を築いていきます。コミュニケーションが上手は人は、自分が話すよりも人の話をよく聞いていますよね。そして、否定をしません。当たり前ですが、否定してくる人に心を開こうとは思いませんよね。アメリカの心理学者カール・ロジャースが提唱した「積極的傾聴」が必要になります。
積極的傾聴とは?
- 聴き手が相手の話を聴くときに、相手の立場になって相手の気持ちに共感しながら聴く
- たとえ反社会的な内容であっても、なぜそのようなことを考えるようになったのか関心を持って聴く
- わからないところがあれば、内容を確かめ、相手にも自分にも真摯な態度で聴くこと
相手を肯定・尊重することは、単に褒めることではありません。相手の言葉に耳を傾け、共感し、理解しようと誠実に対話をすることが重要です。
類似性と行動の同調
年齢、趣味、出身地など、相手との間に共通点を見出すことで、親近感や安心感を高めていきます。
この人となら、熱く語れる!という瞬間は経験あるのではないでしょうか。
また、身振りや姿勢などを相手と一致させることも重要です。一体感が生まれて、親近感を抱くとされています。
しかし、過剰であったり不自然であったりすると、逆に相手に不信感を与えます。相手との関係性や状況に応じて、適切なバランスで使い分けるように注意しましょう。
ペーシング
相手の言葉や行動、感情のペースに合わせて対話をしていきます。
人は、自分と似たようなペースの人に対して親近感を抱きやすい傾向があります。相手のペースに合わせることで、相手はあなたに対して安心感や信頼感を抱き、良好な関係性を築きやすくなります。
相手のペースに合わせることで、相手との間に親近感が生まれ、良好なコミュニケーションを築くことができます。
またラポールが形成されてきたら、目的に対して会話をリードして行くことが可能になります。自分の伝えたいことを、質問や提案をしながら伝えていきましょう。
理学療法士の患者との関わり方:ラポール形成の4つのテクニックとは
3原則を踏まえて、この4つのテクニックを用いるとラポール形成が行いやすいです。
ミラーリング
相手の姿勢やジェスチャーを微妙に模倣することで、無意識のうちに相手との親和性を高めます。
ミラーリングの効果は、相手に「自分は理解されている」「受け入れられている」と感じさせることにあります。相手との間に一体感を生み出し、円滑なコミュニケーションを促します。特に、初対面の人や緊張しやすい場面で、ミラーリングは有効な手段です。
具体例:
- 患者さんが前かがみになったら、同じように少し前かがみになる。
- 話し方は患者さんのペースや態度に合わせる。
- 患者さんの手の動きや表情を控えめに真似る。
ミラーリングは、相手の行動や態度を自然に反映することで、無意識レベルでの親和性を高めます。ただし、露骨なミラーリングは逆効果なので注意しましょう
マッチング
相手の言動や態度に合わせることで信頼関係を築きます。ミラーリングは主に視覚的に模倣しますが、マッチングは主に聴覚的な要素や全体的な雰囲気を調和させます。
非言語的マッチング:
- 姿勢や身振り手振りを相手に合わせる
- 話すスピードやトーンを相手に合わせる
言語的マッチング:
- 患者さんの使う言葉や表現を取り入れる
- 患者さんの価値観や関心事に沿った話題を選ぶ
ミラーリングよりも難易度は高いですが、より自然で気づかれにくく、長期的な関係構築に適しています。
キャリブレーション
相手の表情、声のトーン、姿勢、身振り手振りなどの非言語的なサインから、その人の感情や状態を正確に読み取ります。
うまく活用できると、相手の気持ちを察して共感することができます。相手は「この人は自分のことを理解してくれている」と感じ、信頼感が生まれます。
観察ポイント
- 表情の変化:微笑み、眉間のしわ、目の動きなど
- 声のトーン:話す速さ、声の高低、音量の変化
- 姿勢:体の向き、手の動き、足の組み方など
- 言葉の選択:使用する単語、フレーズの変化
キャリブレーションは継続的な練習と経験を通じて向上するスキルです。相手の反応を注意深く観察し、それに応じて自分のアプローチを調整することで、より効果的なラポール形成が可能になります。
バックトラッキング
相手の発言の一部を繰り返したり、言い換えたりすることです。相手に「あなたの話を聞いていますよ」「理解していますよ」というメッセージを伝えるテクニックです。
相手は「自分の話がちゃんと受け止められている」と感じ、安心感と信頼感を抱きます。そうすることで、相手は心を開きやすくなり、より深いコミュニケーションへと繋がっていくのです。
具体例:
5年前から腰が痛かったんです。
そうですか。5年も前から腰が痛かったんですね。
バックトラッキングとは真の理解と共感を示すツールです。相手の言葉を単に繰り返すだけにならないように、傾聴の姿勢を大事にしましょう。
患者さんのモチベーションを高める関わり方
患者さんのHOPEを達成するためには、私たち理学療法士が患者さんのモチベーションを高める事が重要です。
ダイエットに置き換えてみましょう。最初はやる気が高く積極的に参加できますが、結果が出なかったり、トレーニングに飽きたりすると、徐々にやる気が無くなってきますよね。
患者さんは、「痛み」がある状態です。長期間モチベーションを高く保つためには、理学療法士の力が必要になります。
以下の3つを意識していきましょう。
褒めて、褒めて、褒める
「そんなんで変わるわけないだろ!」と思うかもしれません。しかし騙されたと思って試してみてください。これが効果的なんです。
実際の患者さんの反応です。
そんなに褒めてくれるのは先生だけです...
いくつになっても、褒められるとやる気が出ちゃうね!
ココを褒める
- 筋力があがった
- 可動域が拡大した
- 歩行が安定した
- 髪型を変えた
- 痩せた
リハビリに関係ないことでも構いません。変化に気が付くためには、毎回患者さんを注意深く観察しなければいけません。逆にいうと患者さんは、「褒められること」より、「些細な変化に気が付いてくれた」ことが嬉しい訳です。
しっかりと自分に向き合ってくれている人に、自分の体を診てもらいたいのは当然ですよね。
ゴール目標を定期的に確認する
リハビリを行っていると徐々に、ゴールが曖昧になってくることがあります。ゴール設定が曖昧だと、本当は着実に体が良くなっていても、変化を感じづらくモチベーションが低下してしまいます。
また介入初期に設定したゴールは、リハビリの経過により変化することは多々あります。定期的に患者さんとゴール設定を確認しましょう。
おすすめは毎月計画書を渡すタイミングです。計画書を算定する意味も感じてもらえます。
進歩を可視化する
可動域の拡大や、筋力向上など数字で変化を伝えることもモチベーションを高めるために重要です。毎日少しずつの変化では、自分では気が付きにくいものです。
以下のように伝えましょう。
前回、膝を曲げる角度が90°でしたが、今回は120°まで広がっています。順調ですよ。
リハビリ開始時は筋力検査で0〜5で3でしたが、現在は5です。自主トレーニングの成果ですね。
歩行や姿勢をタブレットで撮影して保存しておくことも、進歩を可視化しやすいですよ。
【理学療法士の患者との関わり方】注意点とトラブル対処法
関わり方には注意も必要です。
仕事中に起こるトラブルは、人間関係によるものが多いです。
注意点と対処法を抑えて起きましょう
新人理学療法士にありがちな勘違い
話すことに自信がある人は、つい自分のエピソードトークをしてしまいます。私も話すことが好きなので、患者さんを笑かせたいという気持ちもあり、自分の話をしてしまう事が多かったです。
しかしそれは大きな間違いです。コミュニケーション能力を向上させたければ、聴く力を磨くべきなのです。
詳しくは、スティーブン・R・コヴィーの名著「7つの習慣」という本を読んでいただきたいです。
【第5の習慣】まず理解に徹し、そして理解される。
ある父親が私にこう言った。「息子のことが理解できない。私の言うことをまったく聴こうとしないんですよ」
「今あなたがおっしゃったことを繰り返すと、あなたは息子さんを理解していない、息子さんがあなたの話を聴かないからだ、ということですね?」
「その通りです」
「誰かを理解するには、その人の話を聞かなければならないものだと思っていましたが」「あなたが息子さんの話を聴く必要があるのです」
7つの習慣より引用
馬鹿な父親と思うかもしれません。しかしほとんどの人がこれと同じようなことをしています。患者さんを理解することに、集中すると自然とコミュニケーション能力は向上します。
20代のうちに読んでおきたい1冊ですので紹介させていただきました。
聞くに徹するようになってから、以前より患者さんの気持ちに寄り添えるようになりました。
つらい思いをしている患者さんのリハビリ中に、自分の話をするのはナンセンスだったなと反省しています。
関わり方が難しい患者と対処法
コミュニケーション能力を向上させようと努力しても、人間同士ですので相性があります。「この人高圧的だな」「この人苦手だな」という方は少なからずいます。
対処法としては、患者さんの背景を想像することです。カルテに患者さんの情報は多く載っていますが、全てではありません。当たり前ですよね。
漫画やドラマでも、最初は憎い敵役も、辛い生い立ちを知ると感情移入してしまいますよね。
患者さんにきつい言われ方をしても、「この方にも色々とあるんだな。しょうがない」と思うことで、自分のストレスを減らすことができます。
【理学療法士の患者との関わり方】よくある質問
お土産はもらっていいのか?
上司にあらかじめ確認しておきましょう。
禁止な場合、患者さんの気持ちを無下にあつかうのは心苦しいですが、「病院の方針なので」と伝えると納得していただけます。
金銭を受け取ってもいいのか
基本的には、断りましょう。
金銭の授受によるトラブルは多いです。
患者さんと個人的な関係になってもいいのか
リハビリ期間中は慎みましょう。
患者さんと結婚する理学療法士もいますし、意気投合することもあります。
しかし、リハビリ中は患者と理学療法士の関係の方がトラブルが起こりづらいです。公私混同しないことが重要です。
【理学療法士の患者との関わり方】まとめ
患者さんと良好な関係を築いて行くためには、リハビリ同様にコミュニケーションの勉強が必要です。ラポール形成について理解を深めることが重要です。
おさらいしていきます。
こんな方におすすめ
- 肯定と尊重
- 類似点と行動の同調
- ペーシングとリーディング
ラポール形成は一見すると小手先のテクニックのようですが、誠実に患者さんと向き合う姿勢がもっとも大切です。
コミュニケーションを学び治して、治療成績を向上させていきましょう。